重度の病気で長期間の入院を強いられた高校生に対しては、治療に専念させることが医療業界と教育業界における共通の認識でした。そのため、従来は情報通信技術を使って授業を受けたとしても、在籍している高校の教師が病棟に一緒にいなければ出席扱いにならないというルールがありました。しかし情報通信技術が発達し、分身ロボットが誕生したことで教育業界に改革が起きたのです。文科省は、在籍している高校の教師を病棟に配置しない場合でも出席扱いにすることは可能、と全国に通知しました。
文科省からのこの通知は、医療業界にとっても転換期となり、関西地方の大学病院では院内に分教室を設置して、高校と中継を結んで授業の同時双方向配信ができるように協力するようになったのです。同病院の看護師たちは通信機器の設定などのサポート業務が増えましたが、入院中も学校とつながることができていれば病気の治療に希望が持てるのではないか、と話しています。入院中の高校生からも、特別授業を受けているような感覚になり理解が深まる、ベッドの上は暇だったが授業を受けることで充実した時間を過ごせるようになった、という意見が出ています。その一方で、移動教室の専門教科や体育などの実技はどうするかなどの問題が生じているという現状もありますが、一定の出席日数を確保できるようになったことに関しては保護者からも評価を得ています。医療業界では教育業界とのより一層の連携が求められているのです。