緩和ケアがもたらした医療業界の転換期

緩和ケアというワードに対して、どのようなイメージを持っているでしょうか。近年では緩和ケアを選択するかどうかで悩むガン患者やその家族が多くなってきています。悩みとなる要因のひとつに緩和ケアという治療の定義があいまいであることが挙げられます。数年前に国が主体となって医療業界を対象に緩和ケアに関するアンケートを実施したことがありました。すると、ガンと診断したときに緩和ケアを始めるのがよい、と回答した看護師が約6割だったのに対し、ガンを治療できる見込みがなくなったときから始めるのがよい、と回答した看護師がまだ約1割もいたのです。

そもそも緩和ケアというワードが生まれたころは、ガン患者が手術後の苦痛を軽減するために受ける治療だと捉えられていました。しかし近年はガンと診断した直後から治療と並行して行うべきであり、患者の症状に合わせて緩和ケアの比重を変化させていかなければならない、と考える医療従事者が多くなっているのです。緩和ケアの定義は転換期を迎えているといえるでしょう。アメリカの学者が発表した論文の中で、緩和ケアによる生存期間について示したものがあります。その中では、ガン治療だけを行ったグループよりも、治療と並行しながら早期の緩和ケアを行ったグループのほうが約2か月間も生存期間が長かったというデータが出たのです。日本でも緩和ケアを早期に行うことの重要性をブログから発信する医療従事者が増加しています。医療業界ではガン治療だけを目的にするのではなく、退院後も患者の人生を支える医療としての緩和ケアが広がりつつあるのです。